フリューの開発現場を支える『DeployGate』、理想のプロダクト開発をともに目指して
「人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!」を企業理念に掲げる、フリュー株式会社は、1997年にオムロン株式会社内でエンタテインメント分野の新規事業を開始し、2007年にマネジメントバイアウトにより独立。現在は創業事業であるプリントシール機を軸に関連WEBサービスや店舗を展開する「ガールズトレンドビジネス」と、キャラクターIPをぬいぐるみやフィギュア、ゲーム、アニメなど様々な商品でお届けする「世界観ビジネス」という2つの領域を強みとして展開しています。
そんな同社は、『DeployGate』のFlexibleプランを導入し、プロダクト開発における検証・共有のスピードアップを実現。エンタメ事業ならではの多様なプロジェクト、また物理的な拠点の違いを越えた協業にも『DeployGate』が活躍しているそうです。
今回は、フリュー株式会社 ピクトリンク事業部 商品技術開発部(2025年3月時点)にて部長を務める盛岡さんに、『DeployGate』導入の背景や活用シーン、今後の展望について詳しくお話を伺いました。
写メール時代から続く、「10代女子の今」を支えるプロダクト開発
ー まずはじめに、自己紹介をお願いします
盛岡さん:本日はよろしくお願いします。
私は通信系ソフトウェアのエンジニアとしてキャリアをスタートし、現在はプリントシール機やそれに連動するネットサービス『ピクトリンクフォト』『ピクトリンクカレンダー』の開発に携わっています。
ー 携わるサービスの変遷について教えてください
盛岡さん:ピクトリンク事業につながる取り組みは、J-フォン(現ソフトバンク)の「写メール」や、コンパクトHTMLが登場した2000年前後にさかのぼります。当時、携帯電話で撮影した画像をそのまま送れるようになりはじめ、「これからは携帯の画像を活用できる時代が来るかもしれない」と感じていました。
その中で、最初にリリースしたのが、オムロンの顔認証技術を活用した「おかおネット」というサービスです。携帯のカメラで顔を撮影し、画像を加工できる仕組みで、モバイルと画像処理を組み合わせた先駆的な試みでした。
また、2000年頃からはプリントシール機(以下、プリ機)の開発に取り組んでおり、当時から売上は好調でした。そこで、「プリ機と携帯を連動させたサービスが流行るかもしれない」という仮説のもと、実験的に新たなサービスの開発にも乗り出したんです。
そうして生まれたのが、2003年にスタートした『楽プリショット』であり、プリ機で撮影した画像を、データとして取得・閲覧できるサービスで、当時としては非常に先進的な内容でした。
ー この取り組みが今のサービスに繋がっていったんですね
盛岡さん:はい、『楽プリショット』から連なる新サービスとして、2011年12月に『ピクトリンク』が本格リリースされ、ガラケー向けのコミュニティ機能などを備えていました。そして2013年には大規模なリニューアルを実施し、2017年にはスマートフォン時代に対応するため、デザインや機能面のリニューアルが実施されました。
ユーザーの感性に寄り添うコンテンツを展開しながら「プリ機に紐づいたメディア」という位置づけが明確になっていったのもこの頃です。ただ、スマートフォンへの移行期には、技術スタックの刷新や開発体制の見直しが求められるなど、課題も少なくありませんでした。
私たちのサービスは、プリ機の進化とともに歩んできた側面が大きく、新機種の仕様や機能にあわせて、サイト側も柔軟にアップデートしていく必要があります。ある意味でプリ機のリリースは、私たちにとって、1つのマイルストーンになっていました。
ビジネスサイドと密に連携し、ユーザーの声を素早くサービスに反映
ー 現在の開発体制はどうなっていますか?
盛岡さん:ピクトリンク事業の開発部は、全体でおよそ50名の組織です。フロントエンド・バックエンド・モバイルアプリの各エンジニアが、3つのチームに分かれてアジャイル型のスクラム開発を行っています。各チームは8〜10名規模で、それぞれの役割を担うメンバーがバランスよく在籍しています。
iOSとAndroidは基本的に分かれて開発を進めていますが、新入社員などはまずどちらかのスペシャリストを目指し、慣れてきた段階で両方に対応できるような形を目指しています。 また、開発とビジネスサイドの距離が近いことも、当社の特徴です。企画・マーケティング・営業などと密に連携し、ユーザーの声をスピーディにサービスへ反映できる体制を整えています。
開発サイクルは1週間単位です。以前は2週間ごとにスプリントを回していましたが、中だるみを防ぐ目的で1週間に変更しました。改善のスピードが上がり、今のチームにはこのリズムが合っていると感じています。
ー 開発にはどんな意識で望まれているんですか?
盛岡さん:「流行を当てにいく」というより、「出したプロダクトそのものが新しいトレンドを生み出していく」ような意識で取り組んでいます。
また、企画からリリースまではどうしても時間がかかるので、その間にトレンドが移り変わってしまうことは少なくありません。特にプリ機は、1機種の開発に約1年半を要し、年に数回リリースされるそれぞれの機種でも仕様は異なります。こうした環境のなかで、サービスをどう連動させていくかは、常に意識している点です。
また、こうした根底には、「自分たちが一番いいと思うものをつくる」という価値観があります。なかでも、プリ機や関連サービスの企画を担うメンバーは「自分たちが本当に面白いと思えるかどうか」を軸に企画を練っており、その熱量が現場の原動力になっていると感じています。
もちろん、主観だけで突き進むわけではありません。週に1回のペースでユーザーインタビューを行い、そこで得た声を試作に反映。実際の反応を見ながら、改善を重ねていくサイクルを日々丁寧に回しています。
ースクラム開発には、どのように切り替わっていったのでしょうか?
盛岡さん:2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言」が発表され、業界全体でアジャイルの考え方が広まりはじめた頃、フリューでも「XP(エクストリーム・プログラミング)」を取り入れようとする動きがありました。導入を試みたのは2006〜2007年頃です。
ただ、当時はうまく運用できている実感がなく、形だけが続いていたのが正直なところでして......そのスタイルのまま、気づけば10年近く経っていました。
転機となったのが2019年頃です。技術的負債の蓄積や、開発内での情報錯綜といった課題が明確になり、プロセス全体の見直しが入ることに。そこから、ようやく「スクラムとしての型」を整えていく取り組みが本格的に動き始めました。
『DeployGate』が繰り返される配布の手間を断ち切った
ー 『DeployGate』はどのような流れで導入されましたか?
盛岡さん:導入したのはかなり前で、おそらく8年ほど前になります。当時、テスト用アプリを社内に配布するには、独自の配布サイトを構築するのが一般的でした。ただ、私たちのように複数のアプリを多くの関係者に届けるケースでは、その方法ではコストも手間もかさんでしまって。
そんな中で 『DeployGate』は、まさに私たちのニーズに合ったツールでした。iOSとAndroidの両方に対応していて、直感的に使えるUIも導入の決め手の1つです。
今でこそ、ピクトリンク事業部が『DeployGate』を社内で最も活用していますが、最初に導入したのは別のプロジェクトでした。
これまでプロジェクトが立ち上がるたびに「配布をどうするか?」という話になり、特に小規模なプロジェクトでは配布サイトを一から作る体力がなかったり、関係者や配布先が途中で変わることも多かったんです。
そういった状況下で、『DeployGate』のように柔軟で手軽なツールが重宝され、導入するケースが自然と増えていきました。結果として、事業部全体で定着していったという流れです。他のサービスを検討したこともありましたが、最終的には『DeployGate』の安定性と使いやすさが評価され、今も継続的に利用しています。
導入当初は、こうしたツールに不慣れな企画メンバーからインストール方法についての質問が寄せられることもありました。ただ、使い勝手の良さが次第に伝わっていくなかで、企画側のメンバー自身がTIPSやインストール手順をまとめてくれるようになり、社内への浸透もスムーズに進みました。
ー 『DeployGate』の活用シーンについて教えてください
盛岡さん:弊社ではモバイルアプリの開発にもアジャイル手法を取り入れており、各機能の確認用アプリの配布や、スプリントレビューのタイミングなどで『DeployGate』を活用しています。開発途中のビルドを関係者に迅速に届けるための、非常に頼れるツールです。
特にありがたいのは、複数バージョンを混在させず、実機で正しく確認できる点です。さらに、誰が・いつ・どのバージョンをインストールしたかをトラッキングできる機能も、開発チームにとっては大きな安心材料になっています。誤ったビルドの配布や使用を防ぐという意味でも、『DeployGate』は欠かせない存在ですね。
ー 導入時、どのような期待がありましたか?
盛岡さん:導入前は、アプリ配布にかかる手間やコストを少しでも減らせたら、というシンプルな期待がありました。ですが、実際に使ってみると、それ以上に価値を感じています。スプリントの中で繰り返し発生する配布と確認のサイクルを、テンポよく回せるようになったのは大きなメリットです。
今では『DeployGate』が欠かせない存在で、もしこれがなくなってしまったら、開発サイクルのスピードが確実に落ちてしまうだろうなと感じるほどです。
また、最近『DeployGate』からリリースされたキャプチャ機能についても確認済みです。弊社アプリはiOSユーザーの比率が高いため、現時点ではまだ導入できていませんが、これまで手作業で対応していたことが自動化できそうなので、ぜひ今後活用してみたいと思っています。
誰でも使いやすく、チームに定着。『DeployGate』が開発現場のハブになるまで
― 『DeployGate』を利用されるなかで、盛岡さんが便利だと思う機能を教えてください
盛岡さん:私が特に便利だと感じているのは、CIとの統合のしやすさです。GitHub Actionsと連携させておけば、PRにコメントを入れるだけで配布ページに反映されるため、「バグ番号〇番対応版です」といったビルドの共有もスムーズに行えます。
また、過去バージョンの確認・復元が簡単にできる点も大きな魅力です。スクラム開発では、ビルドごとの比較や差分確認が頻繁に発生するため、こうした履歴管理のしやすさは非常にありがたいですね。
配布ページのQRコードも、日常的によく活用しています。レビュー時にはSlackでリンクを共有したり、画面を直接見せたりするなど、運用フローの中に自然と組み込まれている機能だと思います。
― 現場ではどのように活用されていますか?
盛岡さん:『DeployGate』は開発者に限らず、POやデザイナー、企画メンバーなど、職種を問わず幅広く利用されています。特に、プリ機の企画担当者など開発者以外の方でもかんたんに使える手軽さは、大きなポイントですね。
QAについては、かつては外部に委託していた時期もありましたが、現在は内製化を進めているところです。チームによって複数のアプリを並行して扱うこともあるため、『DeployGate』上にQAチームをあらかじめ登録しておけるのは、配布作業の効率化に非常に役立っています。
一時は無料の代替サービスを検討したこともありましたが、Googleアカウントが必須だったり、柔軟な運用に対応しきれなかったりといった理由で導入は見送りに。結果として、『DeployGate』の「誰でも使いやすい」という特長の価値を、あらためて実感することになりました。
― 『DeployGate』の一番の価値は、どこにあると感じますか?
盛岡さん:開発のハブとして機能している点に、私は『DeployGate』の一番の価値を感じています。フリューでは、ほとんどのプロジェクトで『DeployGate』を活用しており、「とりあえずここに上げておけば、みんなが確認できる」という共通認識ができているんです。
Slack連携やGitHub Actionsとの組み合わせにより、ビルド情報が自動で通知される仕組みも整っており、情報共有の流れが非常にスムーズです。「何をどこで見るべきか」で迷わずに済むのは、チーム全体にとっても大きな安心材料になっています。
―サポート体制など、プロダクト以外の面については、どんな印象をお持ちでしょう
盛岡さん:ユーザーとのチャネルを継続的に開いてくれているところに、信頼感があります。私たち自身はすでに使い慣れていますが、今後のアップデート情報やプロダクトの継続性などについて、運営側から定期的に共有があることで安心感が増します。
また、運営に関わる方と直接お話しできる場が設けられていたり、積極的に情報提供をしていただけるのも嬉しいですね。「問い合わせが来たら対応する」という受け身の姿勢ではなく、ユーザーとともにより良いプロダクトを育てていこうという姿勢を感じています。
年間300回のユーザーインタビューを起点に、プロダクトを育てる
― ユーザーインタビューを年間に300回以上実施されていると聞きました。ぜひ、詳しく教えてください!
盛岡さん:ユーザーインタビューには、実はかなり前から取り組んでいます。きっかけは2000年頃のプリントシール機市場でのシェア争いでした。当時、ユーザーの声をもとに製品を改善し、それが実際に成果につながったという成功体験があり、今でも続けています。
プリ機の開発では、撮影体験や外装デザインといった製品だけでなく、世界観も含めてレビューしてもらうことを重視しており、いわゆる「見せて・聞いて・反映する」姿勢は、現在の開発文化にも受け継がれています。
このスタイルは、ピクトリンクをはじめとするデジタルサービスの開発にも引き継がれており、今でも年間300回以上(2024年度顧客インタビュー調査実績)のペースでユーザーインタビューを実施しています。
特に高校生や大学生など、ターゲットユーザーに実際にプロダクトを触ってもらい、その反応を観察しながら率直な声を聞くことを重視しています。必要に応じ、『DeployGate』を使って実機配布を行うことも。
以前は外部業者にインタビュー対象者の採用を依頼していましたが、現在は基本的にすべて社内で集客しています。何度も参加してくれる常連の方もいて、中には「ベテラン女子高生」と呼ばれるような存在も(笑)。的確なフィードバックをくれることが多く、とても頼りになる存在です。また、このインタビューをきっかけにフリューに魅力を感じていただき入社した方もいたりと、現場との距離が近い取り組みになっています。
― ユーザーから評価されているポイントや、開発側で意識していることがあれば教えてください
盛岡さん:ユーザーから評価されている要素の1つに、「デザインのクオリティ」があると感じています。私たちはプリ機のデザイナーと連携し、アプリのUIやトーンにもその感性を取り入れるようにしています。
「どんなデザインがユーザーに刺さるのか?」をチーム全体で共有できるように、現在はデザインシステムの整備にも取り組んでいます。表現の統一感を持たせつつ、それぞれのサービスに最適な体験を提供できるよう、知見の共有も進めています。
また、最近ではスプリントレビューの場に他プロダクトのデザイナーが参加し、横断的にフィードバックを行うような動きも出てきています。
フリューでは、京都の開発拠点と渋谷の本社をまたぐプロジェクトが多く、基本はリモート中心の連携ですが、CI/CDと『DeployGate』による配布体制が整っていることで、距離を感じることなくプロダクトの品質を磨けています。もちろん、本音を言えばオフラインで顔を合わせながら進めるのが理想ですが、現状でも不自由は感じていません。
― 新サービス『ピクトリンクカレンダー』をリリースされたそうですね。どのような工夫があったのでしょうか?
盛岡さん:フリューでは以前から、ユーザーの声を素早くサービスに反映できるような体制づくりに取り組んできました。特にアジャイル開発とCI/CDの仕組みを活用し、開発スピードと柔軟性の両立を図ってきたのが特徴です。
今回の『ピクトリンクカレンダー』の開発では、そうしたこれまでの知見や取り組みをしっかり活かすことができました。たとえば、以前手がけた『ピクトリンクフォト』では、配布やレビュー体制にやや時間がかかってしまったという反省がありました。
この経験を踏まえ、プロトタイプ開発の段階からCI/CDの仕組みを構築し、GitHub連携により『DeployGate』経由で自動ビルド配布できるように整えました。
その結果、開発途中のビルドを素早くチームに届けることができ、機能の追加や改善を柔軟に繰り返すことができました。確認やレビューのテンポも上がり、結果として開発全体のスピード感が大きく向上したと感じています。
今回改めて感じたのは、プロトタイプの段階から他メンバーと協業する可能性があるなら、最初から『DeployGate』を入れておいたほうが良いということです。配布が手間なくできることで、開発とフィードバックのスピードも変わってくると思います。
QA改革で加速するフリューの開発現場、”常に自動テストが走る体制”を目指して
ー 今後の展望についてお伺いしたいです
盛岡さん:今後、弊社のビジネスにおいてモバイルアプリの重要性はさらに増していくと考えています。そうした中で、”誰でも” ”かんたん” に使えるという点や、状況を一貫して把握できる「キャプチャ機能」など、『DeployGate』の提供する体験価値にはますます期待が高まっています。
私たちが目指すのは、素早く検証し、素早く評価できる体制の確立です。すでに整っている部分はさらに強化し、まだ不十分な部分は改善していくつもりです。
これまでの話にもありましたが、開発サイクルが速くなればなるほど、『DeployGate』の使いやすさはより大きな武器になります。社内でもその利便性を実感する人が増えていけば、自ずと成功に近づいていけるのではと感じています。
― 現時点で課題に感じていることは、開発面ではどのような部分でしょうか?今後の取り組みについても教えてください
盛岡さん:現在、テストの自動化には一定程度取り組んでいるものの、まだ十分とは言えず、今後の重要な課題の1つと、とらえています。特にアプリが複雑化するなかで、限られたリソースでも安定した検証を回していける体制づくりが求められています。
理想は、QAにおいても「常に自動テストが走っている状態」を実現することです。今は主に企画担当者が手動でテストを進めていますが、重要なポイントだけをピンポイントで効率的に確認できるようになれば、少人数でも対応しやすくなると考えています。
加えて、『DeployGate』のキャプチャ機能を使いこなせるようになれば、さらにレビューや確認作業の負担も大幅に軽減されるはずです。これは、今年中の実現を目指しているテーマの1つですね。
今後は、QAの負担を抑えつつ、より効率的な開発・検証体制を整えていけるよう、段階的に改善を進めていく予定です。
ー 盛岡さん、お時間をいただき、ありがとうございました!